2019年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  浅野 治志

【特別賞】ラムネといもむし

「ゴック、ゴック、ゴック…。あー、生き返ったぁ」

弟と私は、同時に同じ声をあげた。

「ラムネって、本当においしいよね」

「キンキンに冷えてるから、ラムネを飲むと体が一瞬で涼しくなった気がするね」

と、弟と私は、ラムネについて話をした。

その横では母が、アイスコーヒーをストローで勢いよく飲んでいる。

私と弟と母の三人で、夏体みに福岡県にある太宰府天満宮に、お参りにきた。まだ十時前だというのに、既に気温は三十五度近くで、動かなくても汗が吹き出してくる。次から次へと吹き出してくる汗を拭いながら参拝を終え、ようやく仲見世通りにある喫茶店に、三人で入ったのだ。

「やっと、生き返ったねー。暑くて、汗がたくさん出て、お母さん、もう倒れちゃうかと思ったよ」

と言った。

そして、ストローの袋を折りたたんだ。そこに、水を一滴ストローでかけた。すると、小さく折りたたんだストローの袋がムクムクムクといもむしのように広がった。それを見ながら母が、

「今の、私達みたいじゃない?水を得て、生き返った私達みたい」

と言った。弟が、

「何それ、どうやったの?すごい!」

と、食いついた。私は、お母さんも子供みたいなことするなぁと思いながら、

「いもむしみたいだね。はじめは、干からびたいもむしで、水をかけたら生き生きと、動き出したいもむしみたい」

と笑った。

外を見ると、太陽の光がカンカンと降り注ぎ、行き交う人達はまぶしそうに目を細め、そして額の汗をぬぐいながら歩いている。さっきまで、私達もあっちで、次から次へと吹き出す汗を拭いていた。

私は、ラムネを飲みながら想像していた。ストローの袋で作ったいも虫のように、私と弟と母の干からびた姿を。三人とも、外国の絵画のように頬がこけて、弱々しく叫んでいる。今にも倒れそうだ。そこに突然上から水が注がれ、三人の頭の上に一滴ずつポタッポタッと落ちた。すると、三人ともゆっくりむくむくっと立ち上がり、げっそりこけていた頬もふっくらとふくらみ、笑顔になった。弟に限っては、カエルのようにとびはねていた。

私は、「ププッ」と吹き出してしまった。

弟は既にラムネを飲み終えて、瓶の中のビー玉を取ろうと悪戦苦闘している。母もアイスコーヒーをほとんど飲み終えて、仲見世通りのパンフレットを見ながら、お土産をどこで買おうか、考えている。さっきまで干からびそうだったのがうそのようだ。私も暑さで何もやる気が出なかったが、お腹の底から力が出て残りのラムネをゴクッと飲んだ。水分の力ってすごいなぁと思った。

さあ、またあっちに行こう。

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