2019年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  百鬼丸

【準ざぶん大賞】ゆううつな雨の日

今年は雨の日が多く、七月に入ってからはほぼ毎日、雨がふっていた。

雨の日はとてもゆううつだ。なぜなら、私はもうれつなくせ毛で、特に前がみが湿気でぐるりとあばれだしてしまうからだ。

朝は一番大変で、くせ毛にねぐせが合わさる。ドライヤーで整えても、スプレーで固めても、なかなか思ったようにならない。その上、たとえ、朝、調子良く整えられたとしても、プールや汗でまた、グルンとうずを巻いてしまう。それでも、毎朝時間ぎりぎりまで、鏡の前でかみを直すのが、私の日課になっている。

両親には、

「もう学校に行く時間なんだから、もういいでしょう。どうせ、すぐにもとに戻っちゃうんだから」

と言われる。

そんな事は分かっている。でも、そうはいかない。少しでもましな状態で、学校に行きたいからだ。

私がそう思うようになったのは、クラスの男子のある一言からだ。

その日も朝から雨がふっていて、おまけに体育で汗をかいていた後だった。体育館から教室に戻って、次の授業の準備をしていると、近くの席の〇○君が、私のおでこをじっと見て、こう言った。

「藍浬の前がみって、『ゲソ』みたいだね」

私は、最初、何を言っているのかが分からなかった。「ゲソ?」

理解するのに数秒かかった。

理解したのと同時に、怒りと恥ずかしい気持ちが一緒になって、私の顔を真っ赤にした。しかし、目の前にいる〇○君の顔は、けしていじわるを言ってやったぞという顔ではなく、何か大発見をして、つい、心の声が出てしまった、という表情をしていた。

〇○君は幼稚園のときから一緒で、男子の中では仲が良い方だったので、悪気がないのはすぐに分かった。

私がショックで何も言えないでいると、チャイムが鳴ってしまった。その後の授業は、頭の中で『ゲソ』の事がグルグル回ってしまって、あまり頭に入らなかった。

「私の前がみが『ゲソ』って!もっと良いたとえがあったでしょ!」

と、〇○君に言いたかったが、言えなかった。

モヤモヤした気持ちのまま、家に帰って、この事を家族に話した。

すると、妹にはからかわれ、母にはゲラゲラ笑われたあげく、〇○君の発想がすばらしい

とほめてまでいた。

そして、

「お父さんもお母さんも、くせ毛なんだからしょうがないよ」

と、軽く言われ、私の心のシャッターはガラガラと音をたてて閉まった。

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