【ざぶん環境賞】水の恵
僕は鬼怒川の近くに住んでいる。辺りは川の水を利用している鮎の養殖場や花き栽培、野菜のハウス、田んぼや畑が広がっていてのどかな風景が続いている。僕の家でもお米を作っている。鬼怒川の水で作る父のお米はとてもおいしい。お米を作るのに必要な水は、一株当たり約二十㎏といわれており、「水稲」と呼ばれるだけあって多くの水を必要とする。
「お米を育てるのに八十八以上の手間がかかるんだよ。」
と、祖母が教えてくれた。苦労して耕し、水の管理をし、大切に守ってきた田んぼだ。
そんな田んぼの水は、お米を育てるだけではなく、まわりの生き物たちにとっても大切な役割をする。
春、田起しをするとサギやヒバリなどの鳥がエサを求めてやってくる。水が入ると、水生の生き物がやってくる。水と土をかき混ぜる代かきは土がやわらかくなるのでドジョウには絶好の住みか。田植えの後の水の中をのぞいてみると、小さなプランクトンたちがたくさんいて、それをエサにオタマジャクシが集まり、それをヤゴが食べにくる。春の田んぼは、穏やかな水面に映る空と、反射してキラキラ光る水面がとても美しいが、水面下はたくさんの命が息づくにぎやかな世界だ。
夏、田んぼの水を抜いて土を固めたり、稲の成長や気温を見ながら水を一気に入れたり、こまめに水の量を調節する。田んぼに大量の水が入ることで夏の気温を下げ、周囲の暑さをわらげて、様々な生き物を育てている。まわりの草木も元気に成長して活気づく。ホタル、オニヤンマ、カブトムシ、クワガタ、タモロコ、カルガモ、ツバメ、あまり出くわしたくないシマヘビなどたくさんの生き物を家の周りで観察することができる。
冬、ほとんどの田んぼに水はないが、稲株やひこばえを食べに鳥がやってくる。近所に冬の間も水を入れている田んぼがある。「ふゆみず田んぼ」と呼ぶんだよと教えてもらった。水をはることで雑草が生えにくくなる。水鳥、小魚など冬を過ごす場所となる。
田んぼの水は、豊かな生態系を育む役割をする。田んぼの水の役割りはそれだけではなく、気温をコントロールし涼しさをもたらしたり、美しい景観や生き物の奏でる音や水の流れる音に季節を感じ、心身をリフレッシュさせたり、僕たちの生活にも大きな役割をはたしている。
米づくりをとおして、水や自然の恵みに感謝し、生き物たちの存在や環境の変化を見過ごすことなく、先代の人たちが守ってきたものを僕たちも次の世代に継いでいく努力をしていきたいと思う。
たくさんの恵みをもたらす水でできたお米を、今日も僕はおいしく食べる。


