2020年度受賞作品,  ARTIST,  AWARD,  西 のぼる

【準ざぶん大賞】うちの桃は世界一

「今年も桃ができたぞぉ。」

「うちの桃はな、じいちゃんとばあちゃんが作ってるから、世界一の桃なんだぞぉ。」

毎年聞こえてくるこの声の主は、桃農家のうちのじいちゃんだ。ばあちゃんの笑い声とセットだ。少しうるさいと思うくらい元気なこの声は、桃の季節になると必ず聞こえてくる。

僕は二人と一緒に暮らしている。僕達が住んでいるのは、「献上桃の郷」桑折町だ。献上桃というのは、皇室に献上している桃のこと。まとめると、桃の名産地ということになる。うちの桃が献上桃になっているかもしれないと考えると少し誇らしい。

桃がハイレベルなこの町で、なぜうちの桃が世界一と言えるのだろう?うちの桃は確かに美味しい。だけど、世界一と言われると、世界一の桃って?と考え込んでしまう。桃を食べるたびに、世界一の桃の理由が気になる。「うちの桃が世界一である理由とは?」インタビュアーになって、じいちゃんに聞いてみることにした。

「はい、それはですね。」

熱く熱く語ってくれた。少し熱すぎたため、ここでは要約をさせてもらうことにしよう。世界一の理由は水分管理にあるらしい。第一に、桃の気持ちになることが大切だと言う。「今日は暑いから、桃たちも喉が渇いてるだろうなぁ。」確かにいつもこう言っている。桃も人間と同じで喉が渇くのだと教えてくれた。そして、分管理は良い土づくりにもつながるそうだ。じいちゃんは土をベッドに例えた。

「ベッドが硬すぎても柔らかすぎても嫌だよな。ちょうどいいベッドを作るんだよ。」

桃にとって土は大切。土の出来が桃の出来にもつながってくるそうだ。土を作るには水が欠かせない。桃にとって水は人間と同じくらい、またはそれ以上に大切なのだ。水がなければ生きていけない。水が少なくてもだめ、多くてもだめ。桃が今、どれくらいの水を欲しているかを考えてあげなければならないのだと思った。桃の気持ちを知り尽くし、難しい水分管理に自信を持つ二人は桃づくりのスペシャリストだ。そんな二人が作る桃だから世界一なんだと納得した。

感謝して立ち去ろうとした時、

「でもやっぱり、皆が美味しいよって言ってくれることが一番自信につながるかなぁ。」

横からばあちゃんが言った。技術だけでなく、自信もまた、世界一美味しい桃づくりの秘訣なんだと知った。そして何より、僕の「美味しいよ」の一言が、自信につながっていることが嬉しかった。二人が作る桃は一昨年、農協から優秀な桃だと認められ、賞を頂いた。今年も桃の季節がやってきた。二人の元気な声と共に。「美味しいよ。」

と二人に自信をつけながら、僕は水々しい桃を食べる。それも、世界一の桃を。

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